本場の感謝祭・復活祭とウイスキー|伝統行事で楽しまれる文化と銘柄
アメリカの感謝祭でバーボン、スコットランドの伝統行事でスコッチ、アイルランドの復活祭でアイリッシュウイスキー。世界各地の伝統行事でウイスキーがどのように楽しまれているか、文化的背景とともに解説。家庭での楽しみ方も紹介。
ウイスキーは単なる飲み物ではない。文化の一部として、人々の生活に根付いているのだ。特に、伝統的な祝祭日には欠かせない存在だと思う。
15年以上この業界にいて、世界各地の蒸留所を訪れた経験から言えば、ウイスキーは時間と文化を味わう飲み物なのだ。今回は、アメリカの感謝祭、スコットランドの伝統行事、アイルランドの復活祭など、世界各地でウイスキーがどのように楽しまれているかをご紹介しよう。
■ アメリカの感謝祭とバーボン
感謝祭、サンクスギビングデーは毎年11月の第4木曜日に祝われるアメリカの祝日だ。家族や友人が集まって、七面鳥のローストを囲み、一年の収穫に感謝する。ケンタッキーを訪れた時、この日の重要性を肌で感じたのを覚えている。
多くのアメリカ人家庭では食事の前後にバーボンウイスキーを楽しむ。なぜバーボンなのか。それは、バーボンがアメリカ生まれのウイスキーだからだ。ケンタッキー州を中心に造られ、アメリカの歴史と文化を象徴する飲み物なのだ。
感謝祭のような国民的行事では、アメリカの酒であるバーボンを飲むのが自然な流れだと思う。トウモロコシを主原料とするバーボンは、収穫祭にもぴったりだ。マスターディスティラーが言っていた言葉が印象的だった。バーボンは土地の恵みを体現していると。
● 感謝祭での楽しみ方
食前酒として飲むなら、オールドファッションドが定番だ。バーボンに砂糖、ビターズ、オレンジピールを加えた甘くてスパイシーな味わいが、食欲を刺激する。
食事と一緒にはロックやストレートで。七面鳥の濃厚な味わいとバーボンの甘みが調和するのだ。食後酒としては、ピーカンパイやパンプキンパイなど、感謝祭のデザートと一緒にバーボンをちびちびと。この時間が至福なのだ。
● 感謝祭におすすめのバーボン
・ウッドフォードリザーブ:上品で複雑な味わい。感謝祭のようなフォーマルな場にぴったりだ
・メーカーズマーク:柔らかくて飲みやすい。家族全員で楽しめる優しい味わいだと思う
・ブラントン:高級感のある馬の栓が特徴的。特別な日にふさわしい一本だ
■ スコットランドの伝統行事とスコッチ
バーンズナイトは1月25日に祝われる、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズを讃える日だ。エディンバラを訪れた時、この行事に参加する機会があった。
ハギス、羊の内臓を詰めた伝統料理を食べ、バーンズの詩を朗読し、スコッチウイスキーで乾杯する。この伝統が、スコットランド人のアイデンティティを形成しているのだと実感した。
ホグマネイはスコットランドの大晦日だ。クリスマスより盛大に祝われ、真夜中にスコッチで乾杯するファーストフッティングの習慣がある。新年最初の訪問者が、ウイスキーとケーキを持って来ると幸運が訪れるとされている。この習慣に込められた温かさを、現地で実感したのだ。
● スコットランドでの飲み方
スコットランドでウイスキーの一杯をドラムと呼ぶ。ハヴァドラムは一杯やろうという意味だ。飲み方は、ストレートか少量の水を加えて香りを開かせるのが伝統的だ。これが最もウイスキーの真価を引き出すと思う。
乾杯の言葉はスランジェヴァ。健康を願う言葉で、何度この言葉を聞いたことか。
● バーンズナイトにおすすめのスコッチ
・グレンリベット:スペイサイドの優雅な味わい。伝統的な行事にふさわしい格式がある
・ラフロイグ:強烈なスモーキーさ。ハギスの濃厚な味わいに負けない力強さだ
・マッカラン:シェリー樽熟成の豊かな味わい。特別な夜にぴったりだと思う
■ アイルランドの復活祭とアイリッシュウイスキー
セント・パトリックス・デーは3月17日に祝われる、アイルランドの守護聖人を讃える祝日だ。世界中のアイリッシュパブが緑色に染まり、アイリッシュウイスキーやギネスビールで乾杯する。ダブリンでこの日を過ごした経験は、忘れられない思い出だ。
復活祭、イースターはキリスト教の重要な祝日だ。アイルランドでは家族が集まり、ラム肉の料理とともにアイリッシュウイスキーを楽しむ。家族の絆を大切にする文化が、ウイスキーを通して表現されていると感じた。
アイリッシュウイスキーの特徴は、3回蒸留による滑らかさと、ピートを使わない穏やかな味わいだ。スコッチより軽やかで飲みやすく、祝祭にぴったりだと思う。
● セント・パトリックス・デーでの楽しみ方
アイリッシュコーヒーは定番だ。ホットコーヒーにアイリッシュウイスキー、砂糖、生クリームを加えた温かいカクテルで、復活祭の朝食後にも最適だ。
ストレートやロックなら、アイリッシュウイスキーの滑らかさを堪能できる。ギネスとのペアリングも試してほしい。ギネスビールの後にウイスキーを一口。これがアイルランド流なのだ。現地で教えてもらった飲み方だが、実に理にかなっている。
● 復活祭におすすめのアイリッシュウイスキー
・ジェムソン:アイリッシュウイスキーの代表格。滑らかで飲みやすく、万人受けする味わいだ
・レッドブレスト12年:シェリー樽熟成のリッチな味わい。特別な日にふさわしい高級感がある
・タラモアデュー:バランスの取れた優しい味わい。家族みんなで楽しめる
■ 日本で楽しむ本場の伝統
感謝祭風ディナーパーティーを11月下旬に開いてみてはどうだろう。友人を呼んで、ローストチキンを七面鳥の代わりにし、バーボンで乾杯する。アメリカ風の収穫祭を再現してみるのも面白いと思う。
ホグマネイパーティーも試す価値がある。大晦日にスコッチウイスキーでファーストフッティングを再現するのだ。真夜中にウイスキーで乾杯し、新年の幸運を願う。これは実際に試してみる価値がある伝統だ。
セント・パトリックス・デーは3月17日に、アイリッシュパブでアイリッシュウイスキーとギネスを楽しもう。東京や大阪では、本格的なイベントも開催されている。
■ 文化とともに味わう楽しさ
ウイスキーは、その土地の歴史、文化、人々の暮らしと深く結びついている。感謝祭のバーボンには、アメリカの開拓精神が込められている。バーンズナイトのスコッチには、スコットランドの誇りが表現されている。
復活祭のアイリッシュウイスキーには、アイルランドの温かさが宿っているのだ。
それぞれのウイスキーを飲む時、その背景にある文化や伝統に思いを馳せると、味わいがより深くなる。ウイスキーは時間を味わう飲み物だと、改めて実感するのだ。今度ウイスキーを飲む時は、その国の伝統行事や文化について調べてみてはどうだろう。きっと、新しい楽しみ方が見つかるはずだ。
健太郎
ウイスキーの製法や歴史に詳しいライター。
更新日: 2025年11月02日