知識・豆知識 2025年10月17日 NEW 👁 3 views

ウイスキーの製法を知れば味わいが変わる

ウイスキーって実は作り方によって味が全然違うんだ。モルトとグレーンの違い、蒸留方法、樽の種類まで、製法を理解すると今まで飲んでいたウイスキーの新しい魅力に気づける。バーテンダー歴15年の視点から、初心者にも分かりやすく製法の基本と味わいへの影響を解説する。

#初心者向け #ウイスキー基礎知識 #製法

ウイスキーを飲み始めた頃、なぜこんなに種類があるのか不思議に思った。スコッチ、バーボン、ジャパニーズ、アイリッシュ…でも実は、それぞれの味の違いの根っこには「作り方の違い」がある。製法を知ると、同じ琥珀色の液体なのにこれほど味が変わる理由が見えてくるんだ。

原料が味の出発点になる。大きく分けるとモルトウイスキーとグレーンウイスキーがあって、これは使う穀物によって決まる。モルトは大麦麦芽だけを使ったもので、グレーンはトウモロコシや小麦なども混ぜて作る。

モルトの方が味が濃厚で個性的。グレンフィディック12年(4500円程度)なんかは典型的なシングルモルトで、洋梨やリンゴのようなフルーティーな香りが楽しめる。これは大麦麦芽だけを使って、しっかりと個性を出している証拠なんだ。一方でグレーンウイスキーは軽やかで飲みやすく、カナディアンクラブ(1200円程度)のような滑らかな味わいになる。

蒸留方法も味に大きな影響を与える。ポットスチルという銅製の蒸留器を使うか、連続式蒸留塔を使うかで全然違った仕上がりになる。ポットスチルは古い方法で、銅の効果で雑味が取れて、同時に香味成分もしっかり残る。だからシングルモルトは個性豊かな味になるんだ。

連続式蒸留は効率的で、アルコール度数も高く取れるんだけど、味はクリーンになる。グレーンウイスキーの多くがこの方法で作られていて、ブレンドのベースとして使われることが多い。どちらが良い悪いじゃなくて、目指す味の方向性が違うということだ。

樽での熟成が一番ドラマチックな工程かもしれない。新しく蒸留したばかりのスピリッツは実は無色透明で、あの美しい琥珀色は樽から来ている。そして色だけじゃなく、味の60%以上は樽の影響と言われているほどだ。

バーボン樽を使えばバニラやカラメルのような甘い香りが付く。シェリー樽なら果実の甘みとナッツのような風味。新樽を使うバーボンは樽の影響が強く出るから、力強い味になる。一方で使用済みの樽を使うスコッチは、もう少し繊細な樽の影響を受ける。

グレンモーレンジィオリジナル(4000円程度)は主にバーボン樽で熟成させていて、柑橘系のフルーティーさとバニラの甘みが見事に調和している。これは樽選びの上手さを物語っているんだ。

ピート(泥炭)の使い方も製法の重要なポイント。大麦を乾燥させる時にピートを燃やして煙を当てると、独特のスモーキーな香りが付く。これがアイラウイスキーの特徴で、アードベッグ10年(6500円程度)なんかは「アイラ島最強のピート香」と言われるほど強烈なスモーキーさがある。

最初はこの煙っぽさに驚くかもしれないけれど、慣れてくると焚き火や正露丸のような香りの中に、意外な複雑さを発見できる。ピートを使わない蒸留所もたくさんあって、同じスコッチでも全然違う顔を見せるのが面白い。

日本のウイスキー作りは、これらの伝統的な製法を基本としながらも独自の工夫を加えている。イチローズモルトダブルディスティラリーズ(15000円程度)は、秩父蒸溜所と羽生蒸溜所という2つの蒸留所のモルトをヴァッティングした珍しい作品。これは日本ならではの繊細な技術とこだわりの表れと言える。

製法を意識してウイスキーを飲むと、今まで気づかなかった味や香りに敏感になる。「これはバーボン樽の甘みかな」「このスモーキーさはピートによるものだな」なんて考えながら飲むと、一杯のウイスキーがずっと奥深く感じられるようになる。製法の知識は、ウイスキーをもっと楽しむための地図のようなものなんだ。

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admin

更新日: 2025年10月17日